古代技法を忠実に再現した小枡絞りの鹿角茜染


野山に自生する日本アカネを染料にし、長い時間をかけて染め上げる鹿角茜染は、化学染料では出すことのできない温もりが感じられる優美な染め物です。
アカネは古くから薬草として用いられ、浄血作用や保温、血行促進の効果があり、赤ちゃんの産着や女性のお腰、長襦袢などに茜染が使われ、お祝いの時などに贈られたそうです。
栗山家の茜染は、堅牢度を高め退色しないように、下染めを130回も繰り返し、本染め10回以上の古代技法で染め上げます。
この古代技法を忠実に再現した小枡絞りの鹿角茜染です。
下染めを終えた時の牛首紬の布は、非常に固くなっていて、枯らした後の絞りはまさに泣き泣きの作業だったようです。
大人4人がかりで2日かかって掘り上げた日本アカネの根っこを使い、一日いっぱいの長い本染め工程を終えると、下染めの灰汁がすっかり抜けて、驚くほどふんわり柔らかな布地に染まりました。
古代鹿角茜染を前に、鳥肌の立つ思いとはこんなことかと一人感激してしまいました。
万葉朝の絢爛豪華な装束を纏った人たちは、このような鮮やかな茜色を見ていたのでしょうか。